サル腕の克服をした、流派東方不敗は的中率も上がり、個人戦で地区の新人戦に出場することができました。まだ、団体戦のメンバーに入るほどは中りませんでしたから・・・
 初の公式戦に挑みました。一立目4射皆中でした。未熟な私はすっかり舞い上がり・・・2立目1中、3立目残念。。。終わってみればトホホの成績でした。技術の克服はできたものの、心の焦りと慢心が生んだ結果でした。
 練習試合や小さな試合で同じような失敗を繰り返していたある日、恩師から「流派東方不敗、ちょっと来い」と師範席の隣に座らせられました。レギュラーが立を組んで練習しています。「暫く見ていなさい」で、暫く見ていると「Aはこういう引き方をする、長所は・・・短所はここ、これを直したら的中が安定する。」とそれぞれに解説をしていただきました。一通り指導が終わると、師範席から選手に背を向けて正座し、「目を瞑れ」、そして「誰の弦音か当てて見ろ」一人分かれば、分かりそうなものですが、弦音を聞くことに集中してザワザワした気持ちが無くなっていきました
 「これからは、色即是空 空即是色 の意味を考え、唱えながら引きなさい」 と言われました。
ちなみに、「色即是空空即是色」とは、「この世にあるすべてのものは因と縁によって存在しているだけで、その本質は空であるということ。また、その空がそのままこの世に存在するすべてのものの姿であるということ。」
 高校生の流派東方不敗にとんでもない課題を課せられました。試合の度に頭をよぎるようになりました。
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 高校の弓道部で、1年生から顧問の指導を受けることはなかなかありません。1っこ上の先輩、2個上の最上級生が「神」でしたから、先輩方の指導が殆どでした。今思えば、訳の分からない練習が多かったのですが、後日聞きましたら、「あまりの新入部員の多さに驚き、どうやったら辞めるか?皆で相談して練習をさせていた」との事でした。
 さて、流派東方不敗はとんでもないサル腕です。サル腕とは曲がり方が色々ありましたが、流派東方不敗の場合は逆「く」の字のように左ひじが曲がり、肩と拳のラインよりも肘が内側に入ってしまうのです。つまり、矢の真下に肘が来ている状態で、弓道には非常に不利です。何せ押す力のベクトルが違う方向にずれるのですから・・・。(有利という人もいます)
 それでどうなるかといいますと、離れる度に肘を弦で払うので、激痛が走ります。そして、肘には痣ができ、血が滴ります。よって、流派東方不敗はサポーターをして、1射1射肘を払いながら弓道をしていました。こんなものだと思って・・・。
 ところが、見かねた恩師が集中指導をしてくれました。「1ヶ月的前に立つな、巻藁だけに専念しろ」
手の内、打起し、大三、引き分けと個別に修正指導です。来る日も来る日も巻き藁の連続です。皆は的前を引いているのに・・・。それでも、1ヶ月経つ頃にはサポーターを弦が払うことは殆ど無くなりました。毎日、付き合って指導してくれた恩師に感謝です。ただし、緊張したり、汗をかいて手の内が滑ると打ちましたが・・・。
 そして、的前の許しが出た日、久しぶりに的前に立ちました。ドキドキ緊張と興奮の的前です。恩師が見守る中、行射しました。打ち起し、大三、引き分け、「よし、肘が矢の真下に来ていない」その矢はどこに飛んだかは忘れましたが、肘を弦が払うことなく、飛んでいきました。次の矢も次の矢も繰り返し弦で払うことはありませんでした。「やった!!」「ありがとうございました!!
ま、それでしばらく引けや恩師はたったそれだけ言うと、素っ気無く帰っていきました。流派東方不敗はこんなに嬉しいのに・・・。そういう人でした。
 ただし、流派東方不敗はこの練習のせいで巻き藁は大嫌いになり、その後学生時代に巻き藁をひくことはありませんでしたが・・・。