征矢弓具店のメールマガジンに登録していると、時々セールのお知らせがあります。今回、歳末セールでヤフオクに中級的位置づけの弽「束理」それの燻革仕様で、手型セミオーダーの品が30,000円で出ていました。
 教室の受講生に弽を使って説明する際にどうも薬指の存在が説得力がありません。それならば、ということで落札してみました。(実は三つ弽も引けるのではないか?と企んでいました)
 オーダーしようとしていたら、教室の受講生で経験者の女性が、「高校で購入した、弽がボロボロになってしまい、買い換えたいがあまりお金がありません何か良い方法ありませんか?」女性に甘い受講生想いの流派東方不敗は征矢弽の購入権を譲ることにし、征矢さんに連絡しまして、変更を快く了承していただきました。
 手型を取り、送って待つこと3週間・・・届きました。
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 おお、結構綺麗。流派東方不敗の征矢誂とは比べるべくもありませんが、一般で使うには十分。いや十分過ぎます。高校を卒業して買い直すとか、大学を卒業して買い直すにはうってつけです。一般の人でも2個目にステップアップするにはうってつけな弽だと思います。そしてイカスのが、燻したニ・ホ・ヒ道場を燻した匂いが漂います。彼女は車で持ってきたら、車が燻し臭くなったそうです。
 燻しの匂いに流派東方不敗の心はときめきます。「なんて良い匂いだ」(変態)
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 彼女も「臭い」といいながら大喜びで引いていました。彼女がこれまで使っていた弽は控が殆どない弽であったため、最初は硬くて使いにくいかと心配しましたが、直ぐになじんだようです。キレのある離れを連発していました。コストを抑えながら、勘所はしっかりと製作されている弽。燻されて耐久性も望めますし、狙いどころだと思います。
 暫くの間、彼女が練習にきたら燻しの匂いが道場に漂います。
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 同じ道場の人が、「斎藤紫山」と思われる古弓をヤクオクで落札しました。以前も勘十郎をヤフオクで落とし、手入れしていましたが、今回は汚れなどが酷く、磨いてペーパーで擦ってニスを塗って・・・など色々と作業をして籐を巻き装束を整えて持ってきてくれました。
 確かに「斎藤紫山」と読めます。当代の小倉紫峯師の御爺様に当たる永野福二師の作品と推測されます。九州を代表する弓師さんと聞いております。となると昭和初期?大正?の弓でしょうか?
     110204 003左から斎藤紫山、先代小倉紫峯、当代小倉紫峯

 外竹は経年劣化か(劣化とは言わないかも)、飴色に変色しています。内竹は煤竹であったであろう変色をしています。並寸の弓ですが、なんといっても弓が太い!!握りから関板まであまり太さが変わらないせいか、弓が重いです。。。
 関板は鉄刀木か黒檀だと思いますが、硬そうな感じです。そして側木はシコ杢で木目が非常に綺麗もっと時間をかけて磨けば凄いのかもしれません。そして側木沿いに黒い線が二本「ニベ弓?」だろうと思います。というか、その時代に合成接着剤の弓は存在したのでしょうか?分かりません。
 この頃はよい材料がふんだんにあったのでしょう。とても贅沢な弓です。それで持ち主のHさんから「好きに引いていいよ!」とお言葉。それで、本弭のあたりを押してみたのですが、「つ、強い。これは引けない!」またもや発するこの台詞・・・。肩入れをしようと大三を取ろうとすると、「有り得ない強さ」です。「こんな強い弓引いたことがない。流派東方不敗の弓より3~4キロは強い?」と思いました。
 それでも矢を番えて大三へ・・・。「無理!!」でももう少し、と思うとそこからはすっと弓の負荷が懸からなくなり引きやすくなります。そう、松永萬義と同じくニベ弓の特徴でしょうか。これなら引けないこともないかも・・・。と思いながら強弓を会まで持ってきました。大三までに比べると、嘘のように楽です。会で弓が硬く感じません、弓力を受け止められるような優しい感じです。
 長い間眠りについていたはずの斎藤紫山を離してみると、けたたましい弦音とジェット機のような唸りで巻藁に矢が吸い込まれました。周りの人も唖然・・・。そして、弓返りした弦は左腕から跳ね返って、拳の先の方にきています。そう、教本の本多利実翁の写真のように・・・。まさか、と思いもう一度引きましたが、矢張り同じです。お・そ・ろ・し・いこんなことがあっていいのでしょうか。しかし、離れの反動は嘘のようにありません。
 どこかで眠りについていた「斎藤紫山」平成の今見事に復活。ギアナ高地でドモンに倒されたはずのマスターアジアが、決勝リングに何事もなく現れたような、そんな感じです。(ちょっと違うかな?)
 温かくなって出来れば、どこかで人前で引いてみたいですね。心配な点は並寸ということです。
 松永萬義は取り懸けから「ピイィン」とした張りを感じます。弦が元に戻ろう、弓が元の形に戻ろうという意志を持っているかのようです。弓から出るオーラが”並”の弓とは違います。
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 大三の圧力が一番感じます。そこから、引きにつれ柔らかく、変な例えですが、「弓の節と節の間が伸びる」ように、しなやかに弓力が懸かってきます。決して暴力的に、加速度的に弓力が懸かるわけではありません。
 そして、目通り辺りからは弓力が増えず、体が弓に吸い込まれるように引き分けて会に至ることができます。会では(会はないですが)会で体が伸びることができて、会で弓が固く感じないから、弓力を強く感じないから、「詰め合い・伸び合い」が存分に出来るような気がします。
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 ひょっとして、「弓道教本」に書いてある、「伸び合い・詰め合い」ってこんな弓を引いて書いているのでしょうか?カーボン入り弓やグラス弓ではとても出来そうな気がしないです。というか、松永萬義などのニベ弓を引いてしまうと、引き味を知ってしまうと元には戻れない禁断の果実?
 その会から離れに移ると、弦は瞬間ワープのように返っています。離れで弓に抵抗がない!弓が軽い!勝手に「軽妙な離れ」が出来ます。そして、矢は素晴らしく伸びていきます。簡単に悦に入ってしまいます。
 ただし、弦音は正直です。贅沢な「桂」弦を以ってしてもよい離れで無いと「ベシャッ」という、最高級品らしくない音が惨めに響きます。伸び合って良い離れが出ると、「う~んエクセレント!」で、ずーと残身を取っています。
 さて、この松永萬義、TPOに要注意です。講習会では講師を上回る弓になる時もあります。そんな時は講師から「100年早い」「良い弓が台無しだ!」「何だこの手入れは、弓がなくぞ!」等様々なお褒めの言葉をいただけます。確かに、手入れのされていない松永萬義を見ると悲しくなります。。。せっかく垂涎の弓を持っているのに。
 そんな訳で流派東方不敗は専ら地元の道場で、誰もいない時に引きます。大事な大事な箱入り娘、門外不出です同じ道場の人でも知らない人は結構います。
 いつか、松永萬義の似合う弓引きになりたいものです。その時こそ、流派東方不敗の継承者「真のキングオブハート」になることが出来るのでしょう。それまで修練に修練を重ねなくてはなりません。
 松永萬義弓は、弦を懸ける時から神経を使います。雑に適当に懸けようとすると、弓がひっくり返ってしまいます。最悪弾くことになるのでしょう。しっかり弓に正対して、弓に体重を懸けない様に、ゆっくりと本弭を引き上げ、押し手を効かさないように、本当に赤子を触るように弦を懸けないといけません。推し過ぎると船底になってしまいます。静かに優しく弦を懸け、「珠玉の逸品を壊さないぞ!」という心構えが必要です。
 弦を懸けると直ぐに成りを確認し、修正します。弦を懸けて直ぐでないと形は修まりません。弦を懸けて30分は何も手を加えません、弓が落ち着くの待ちます。その間に着替えたり、他の弓の調整を行います。そんなマッタリとした時間が必要ですが、その間に「松永萬義を引くぞ~!」という気持ちを盛り上げるわけです。
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 この松永萬義ですが、さびしがり屋で拗ねやすい弓で、使わず放っておくと裏反りがきつくなり弦を懸けるのに黄信号がともります。弓がひっくり返りそうになります。裏反りがきついと張り込みが必要ですが、流派東方不敗は間抜けなことに麻弦を懸けていて、2回松永萬義が飛びました 「僕を使ってよ」と主張が強い弓です。
 勿論弦は麻弦、しかも大体は「桂」、コストパフォーマンスを考えて「雲仙」くらいです。夏冬で若干匁を変えています。夏は軽め、冬は重めにしていますが、弓に良いのか謎です。弦に入念にクスネを懸け、弓を和手拭で拭いています。(弓を拭くのは賛否ありますが、松永萬義はそうしています)
 「秘蔵っ子」の松永萬義、引き始めも細心の注意を払います。「捻らない様に、握らないように・・・」弾いたら、もうこの弓は手に入らない!そういった薄氷を踏む思いで1射1射巻藁をこなします。毎回徐々に矢尺を伸ばしつつ引くようにしています。誰に何と言われようとも・・・。~~~続く~~~
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